文楽十二月公演「源平布引滝」

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それにしても豊松清十郎さんの遣う葵御前の美しさよ。
勘十郎さんもかっこいいけど気がつくと清十郎さんを見ている。
吸い込まれるように見入ってしまう。
葵御前が静止すると主使い、左、足の三名の気配が消える。
人形遣いと人形が手でつながってることすら忘れてしまう。
ただそこに付き添ってるだけのような印象。
なんか凄いものを観てしまったようで未だに脳から映像が消えない。

もうひとつ、耳から消えなくなってしまったものがある
オクリの語りだしの前の三味線。
♪デェ~ンデン  デェ~ンデン…♪
これからどんな苦難が待っているのだろうという
登場人物の不安感にシンクロしてしまい胸が苦しくなる。
鑑賞していてこれほど苦しい芸能って他にあるのかな?

「九郎助内の段」の「実盛物語」のクライマックスでは
千歳太夫の語りと富助さんの三味線にやられた。
本当に動悸が激しくなってしまい顔が紅潮してくる。
人形劇を観て「ドキドキ!ハァハァ」してる自分(笑)

今回の鑑賞では先週鑑賞教室に行って
プログラムを購入しており床本まで熟読してから鑑賞に臨めた。
そのせいか、字幕やイヤフォンガイドが邪魔な感じ。
聴き所ではイヤフォンを外して聞き入った。

まだ自分には「時代物“脳”」が備わっていないから
物語世界に入っていけるか不安だったがそれは杞憂だった。
十分没入してしまったし特に瀬尾十郎に感情移入してしまった。
残酷な敵役だけど今回の鑑賞のなかで
文楽マジック(ある種の幻視)が出現したのは瀬尾十郎だった。

きっと、小まんの歳年齢からして
「オレの子も今頃こんなかな…?」って思うだろうし
葵御前が「腕を産んだ」時にあんなに驚くのは不自然だけど
新しい命の誕生に引け目というか屈折した思いがあるのだろうね。

オカルト実盛君よりずっと好きだな瀬尾十郎さん。

昨年、文楽と出会った頃に千歳太夫の語りを聴いて
「過剰」なものを感じたのだが今はそうでもない。
演じる側も観る側も枯れていくのね。
ところで咲甫太夫、なんかボイトレやってるの?

最高裁の脇を抜けて演芸場の前に出たとき
石焼き芋の軽トラと遭遇。
なんか現実のものと思えず小道具にしか見えない自分が居た。

そろそろ重症だな。

by soba-kiri | 2008-12-18 00:45 | たまにはこんな感じで  

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